土曜日、11時を過ぎても気温14度、風も少なく暖かな春の夜だった。
J次郎の友達の誕生日を祝うべくRichmondストリートにひっそりと佇むToikaというクラブへ行った。ここで同じく仲間のうちのひとりがDJをしているのだ。
ここはクラブラウンジなので、ソファーのスペースが広くとってあり、こじんまりとした雰囲気のきれいめなクラブだった。
夜更かしすると今年は目にきているアレルギーの症状がつらくなるため、最近はパーティーへの誘いはことごとく断っていたので、久しぶりに夜でかけた。
11時過ぎについたが、ほとんど人はいなかった。そして12時になってやっとひとが入り始めたが、私達はここで早々に退散。
トロントは2時近くまで地下鉄があいているので、ストリートカーから地下鉄に乗り換えて家路に着いた。
地下鉄では、途中から、大荷物のカップルが乗ってきた。
ひとひとり入りそうな大きな黒いバッグに、木の箱。よく楽器を演奏するひとは大きな楽器のケースを持って乗り込んでくるが、楽器の入っているケースには見えない。
そして、その木の箱の側面にはこうもりのマークが。
そこでJ次郎に指摘され、Yonge×Dundas交差点で先日した会話を思い出した。
イートンセンターのH&Mの前あたりには、古風な衣装を着て、自身も白く塗りたくって彫像に扮したひとが立っている。
それが、その日はバットスーツに身を包んだバットマンだった。女のひとを抱き上げて写真を撮られていたが、あのバットマンスーツってどこかで買えるものなのだろうか、とふたりで話していたのだ。
その頑丈そうな木の箱は、まさしくバットマンが立っていた台だった。
体つきや、顎や口元といい、地下鉄で席に座っている若い青年がそのバットマンだと間違いないとおもった。
しかし、どこでバットスーツを脱いだのだろう。