母から咳がとまらないので近所の医者に行って咳止めの薬をもらってきたという話をきいたときも、夕食後になんだかお腹がちくちくする、と言っていたときも胸騒ぎを覚えた。そして悪い予感は的中してしまうことになった。あの日すぐに定期的に行っているがんセンターに連絡していれば検査の日を早めてもらうことはできたのだろうか。
その3か月後、2025年3月の定期健診で肺に複数転移していることが発覚した。先生は、とりきらないだろうけどどうしてもしたければ手術してもよいがおすすめしない、抗がん剤もおすすめしないとのことだった。
それを聞いたとき、いてもたってもいられなくなった。眠れなくなり、食べられなくなった。本人が一番つらいというのに。
迂闊だった。大丈夫、大丈夫という母の言うことをうのみにして、安心しきってしまっていたのだ。何かあっても、治療すれば大丈夫なんだろう、と。まさか治療できないとは。
そもそも3か月前の2024年9月の定期健診において、肺に点々が見受けられるが大丈夫だろう、と言われたというではないか。何が大丈夫だったのだろうか、いや、そうだった、うちの母は正常バイアスの強いひとだった。
虚弱体質で、健康と予防治療に積極的に時間とお金を費やす私をばかにしていた母。
OOさんだって、ジムに行って健康に気を使って頑張ってたのに脳梗塞おこしちゃって、健康診断なんて意味ない、お母さんは一回も行ったことない、と自慢していたっけ。
そのときは何も言い返せなかったっけ。でもね、今なら言い返せる。
もし自治体で無料でできる健康診断をうけていたら、血液検査に異常値が認められていただろう。
どんなに健康に気を使ったところで癌や脳梗塞の予防効果は低い。ただし、なった後に差がでてくるのだよ。年齢に関係なく、個体として健康的で体力あるひとのほうが、手術や抗がん剤に耐えられ、がんに掛かっても生存率があがるし、脳梗塞になってもその後のリハビリの回復力がちがうのだよ。
母は、74歳で軟骨肉腫と診断され、外科手術を終えた。病巣部はすでにとりきったので、抗がん剤手術はなしで、2年過ぎてもも再発することなかったため、本人はすっかり癌は寛解し自分の両親のように90過ぎまで生きるのだとばかりおもっていたやさきのことだった。
71歳くらいから肩が痛むようになり、医者に行くも四十肩や五十肩だろうということで、骨粗しょう症の薬や痛み止めの薬をもらっていたがよくなることはなく、年齢てきなものあるだろうから、もうこのまま痛みとともに生きていくことになるのだろう、そんなふうにおもっていたところ、肩にしこりがあらわれておおきく膨らんだ。やっと、肩の痛みは骨肉腫であったことが判明した。このとき74歳。
そして現在76歳。日に日に咳がひどくなり、胸を苦しそうにそうにおさえてるほかは元気に日常生活をおくれているが、数年後には確実に会えなくなる。そうおもうと心臓のあたりが締め付けられる。
ーこれまでの経過ー
2019年ころから肩に痛みを感じ始める。痛み止めや骨粗しょう症の薬を服用開始。
2022年春 肩にこぶがあらわれて軟骨肉腫と診断される
2022年 5月 腫瘍摘出手術により左肩甲骨を失う。抗がん剤なし。
2025年 3月 肺複数転移