借りている家が売りに出された時

11 years ago

2時になった。それまで着ていた楽なスエットからジーンズに履き替え、外からドアが開かないように、ドアの前に椅子を置いた。約束は2時から3時の間、ということだったが、過去3回の経験からきっとくるのは3時頃だろう、という確信があった。窓から外をみるとどしゃぶりの大雨。あまりにも雨が激しいので、通行人が病院の軒下で雨宿りをしているのがみえた。これではますます遅れるだろう。

そして、約束の時間をとっくに過ぎたころに、遅れるとの連絡があるのだ。

新居のコンドはホテルと建物をシェアしているため、セキュリティーが厳しく、エレベーターもキーをかざすと自分の住んでいる階のみ行くようになっている。

そのせいか、各部屋のドアにはキーチェーンがついていない。そして、彼らのなかには、ノックしてから応答を待つことなくすぐに鍵をあけてドアをあけてしまうひともいる。

そうすると、ドアのノックが聞こえないところにいたりすると、家のなかにいきなり他人がいて、こちらはすごくびっくりするのだ。さらに、靴を脱いで欲しいとお願いする暇もなく土足のままずかずかと他人の家にあがってきてしまう。

彼らとは、不動産会社のひとたちのこと。彼らはオーナーから託された鍵を持っていて、事前に告知さえしておけば私達が不在のときでも客を連れて部屋のなかに入ってもいいのだ。

この部屋に越してきてまだ3ヶ月だというのに、オーナーの事情で借りているコンドが売りに出されることになった。

せっかく引越しが一息つき、やっと新居で落ち着ける、と安堵していた矢先のことで、まさに寝耳に水だった。他人の出入りが多くなり煩わしいことこのうえないのだが、これから何が起こるのか、全て見届けようとおもっている。

さて、この日の2時から3時の約束のひと達がきたのは3時過ぎ。

ところが、いつもとは違った。若い男性で、過去3回のエージェントと違い、ドアを開けるとまず感心なことに、挨拶、そして自己紹介。今まで自己紹介してくれたエージェントはひとりもいなかった。そして他のエージェントはただ無言で客についてまわるだけだったが、彼は一応いろいろ説明して営業していている。さらに、とても感じがよく、ポジティブなエネルギーで満ち溢れている。今後何かあったときにこのひとに我々ののエージェントになってもらいたい、とおもい、名刺をお願いしようと思い始めたとき、彼が説明してくれてわかったのは、今回連れてきたひとはエージェントがいなくて、自ら物件を紹介している、ということ。つまり、この若い男性はオーナー側のエージェントで、いつもアポが入るとJ次郎に連絡してくるひとだった。

さすがオーナー。人選びもばっちり。私はまたしてもオーナーに感心してしまった。

オーナーは、1986年生まれの中国育ちの中国人。彼女、不思議ちゃんなところがあって理解に苦しむことが多く、オーナーとして頼りないことこのうえないのだが、ことお金が絡むことに関しては目を見張るものがあり、こちらが感心してしまう。トロントで学生だった彼女は2008年に家の値が下がったときにこの部屋を購入したものの、その直後にシンガポールで仕事がみつかり、投資目的でこの部屋を貸し出すことにしたらしい。契約の際には、今はまだ売りに出す時期じゃない、と言っていたが、予想外の妊娠が発覚し、家を買いたいということでこの部屋を売りにだすことにしたそう。

マーケットに出されて2週間。ちなみに売り出し価格は359,000ドルとのこと。

明日の日曜は2件のアポ。買いたいというひとはあらわれるのか。

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