あるビルの前で、痩せた裸足の老婆が車に寄っていき、窓ガラスに向かって小銭をねだっていた。
すると車の窓ガラスが開き、助手席から10ルピー札一枚(約20円)が老婆に差し出された。
老婆が受け取ろうとしたその瞬間、別の手がのび、10ルピー札は横取りされた。
横取りしたのは、そのビルに雇われていると思われる、制服を着て帽子をかぶった、30代前後とみられるふっくらとした端整な顔立ちの一見やさしそうな男性だった。
車の中から、そのお金はお前のものじゃない、老婆に渡せ、と指図すると、その男はポケットから財布を取り出し、10ルピー札をしまい、かわりに1ルピーを老婆に渡した。
車の中からいくら言っても男は聞き入れず、老婆もすがるように男に懇願するが、柔和な顔つきの男はにこにこと笑顔で首を横にふるだけ。そのうち何事もなかったようにもといたところへ戻っていった。
一部始終をみていたJ次郎は怒りがこみあげてきたようだったが、私はなんだかすごく悲しくなってしまった。
そして10ルピー札をそっと老婆に渡しに行った。
 Taj Deccanでは連日のようになんらかのパーティーが開かれている。
Taj Deccanでは連日のようになんらかのパーティーが開かれている。
企業のパーティーもあるが、婚約パーティーは多く、だいたい招待客200人、800人といった規模で華やかに盛大に祝う。
なかでも先週の土曜日の夜開かれた婚約パーティーはすごかった。
朝からステージが組み立てられ、ホテル内のあらゆる敷地が貸しきられ飾り立てられた。長いブッフェ台が二ヶ所にバーコーナーがあちこちに設置され、スタッフも総出らしかった。
夜9時をまわりステージ上にてダンサーを従えて華々しく女性シンガーの歌とダンスのショーが始まったとき、彼女のコンサートが開かれたのかとおもったが、婚約パーティーのために呼ばれたパフォーマーで、MTVインドにでているタレントらしかった。ホテルのスタッフに聞いたところ、ソフィー(Sophie Chaudary)という映画にも出演する有名なタレントらしい。
ビヨンセやジャネットジャクソンなどのヒット曲がアレンジされ、ヒンドゥー語で歌われる。J次郎は絶妙なリズムのパーカッションがとても気に入った様子。
そのうち今夜の司会進行もつとめるソフィーが、若いカップルを両親とともにステージ上に呼び、お披露目。親戚もステージ前に設けられたダンスフロアに集められる。女性はみな美しい衣装をまとい色鮮やかな宝石の連なったずっしり重たそうな首飾りとおそろいのイヤリングをしている。そしてダンスが始まるのだった。
招待客に紛れステージ近くでそっとインドの歌とダンスのショーを楽しんでいた私たちだが、親戚とみられるアメリカ英語を話す男性にさあ君達も踊りなさいと強引にダンスフロアに引き立てられ、一緒になって踊った。
こうして食べ放題、飲み放題の豪華なパーティーは続き、深夜すぎまで夜空に重低音が響き渡るのだった。
そしてこのパーティーの様子は12月8日付のDeccanChronicle紙の社交面の一面でもとりあげられていた。
ハイデラバードのSPARというスーパーで日進のカップヌードルとチキンラーメンをみつけた。なんだか懐かしくて買ってみた。
カップヌードルはトマト味などがあったが、一番食べやすいと思われるTANGY CHICKENという味にした。
さて、味のほうは、TANGY CHICKENはスパイシーで辛め。チキンカレー味といったところ。1個24.99ルピー。
チキンラーメンはそれほど辛くなく、やはりこちらのほうが食べやすい。J次郎もこちらのほうが好きなようだった。一袋8ルピー。
バンガロールに滞在していたとき職場で一緒に働いていた同僚が、週末にかけてハイデラバードの実家に帰省していて、時間に都合をつけてわざわざJ次郎に会いに旦那さんと一緒にホテルまできてくれた。そのとき彼女が手土産に持ってきてくれたのがこのクッキー。ハイデラバードで有名なお菓子なのよ、と教えてくれた。
厚みがありさくっとしていて、ナッツの歯ざわりとフルーツの香りのするクッキーはマサラティーとよくあい、おいしくいただいた。ちなみにカシューナッツはインドの特産物でもある。
J次郎も大変気に入ったようだ。

半年前バンガロールに滞在したとき、J次郎が携帯電話をもつと言い始めた。
たった3週間の滞在なのだから、私はどちらでもよかったが、到着した日にテロが起こったこともあり、連絡がいつでも取れるのは安心だということで、プリペイド携帯をもつことにした。
大きなショッピングモールのなかにある携帯ショップにて、本体を買い、二台分契約してその日からすぐ使えるようになったが、1週間ほど経って、滞在10日ほど残し、機械的な故障ではなく、急に通話不能になった。
購入したショップに行くと、契約した会社に電話し、契約したときの書類を調べ始めた。そして、驚いたことに、書類に不備があるといい始めた。まず、パスポートのなかのインドのビザのページのコピーを提出しなければならないのに、コピーされていたのは、何年も前にJ次郎が日本へワーホリに行ったときに取得したビザのページだった。コピーしたのは、そのショップの店員であるが、あたかも私達に落ち度があるかのような指摘ぶりだった。そして、使用再開するためには、インドのビザのページのコピーを持ってこい、という。さらに、写真も提出していないから、証明写真も持ってこい、といいだした。
自分達が間違えたのに、こちらが一度お金を払ってしまったらもうなにもする気はないようだった。しかたなくモールの受付に行き、コピーできるところを聞いて、モールの近くのコピー屋まで行ってコピーしてきた。写真はモール1階に写真を撮れるところがあったので、お金を払い、証明写真を撮った。
そして、書類が提出されてから承認が降りるまでに24時間かかるという。この時点ですでに腹立たしかったが、待つしかなかった。結局は、売り上げを上げたいばかりに、契約に関してショップがいい加減だったのである。
そして、24時間たっても、ある程度予想していたとおり、通話はできなかった。
その後もう一度そのショップに行き、マネージャーとおもわれる人に話しをしても、とりたててできることはなく、再度契約した会社に電話して確認し、今度は絶対24時間で大丈夫だから、などと言われる。もちろんその24時間後に使えるようになったわけではなかった。その時点で帰国まで3日を残すところだったので、私達はあきらめた。ショップは絶対返金など応じないし、できることはなにもなかった。
結局携帯が再度使えるようになったのは、帰国する日、空港で飛行機を待っていたときであった。
さて、私もJ次郎も、再度インドに来ることがあるとはまったく思っていなかったが、今回あのとき購入した携帯が再び使えることとなった。驚いたことに、残っていたプリペイドでしばらく通話できていた。そして、それも終わったので、あらたにプリペイドの契約をしなおすことにした。今回はAIRTELで、安心である。契約は、ホテルに手数料を払って全て代行してもらった。以前のようなことがあってもいやだった。
本来、私達のような短期の滞在の場合一般的に必要な書類は、パスポートの顔写真のページと、インドのビザ、証明写真のほかに、ホテルに書いてもらう滞在証明書であるが、この滞在証明書も、契約時には何の説明もなく求められなかった。
バンガロールで撮ったときの残りの証明写真を持参したのが役にたった。この証明写真、一度撮ると、何故か10枚くらい大小のサイズで大量にもらえるが、背景が鮮やかなピンクのため、カナダに持って帰ってもなんの役にもたっていなかった。
↑Cocktail Samosa 95ルピー
←緑がコリアンダーソース、赤はマンゴピクルス、ピンクはタマネギの漬物 料理に添えられてくる。
このレストランはハイデラバードのタウン誌ではよく掲載されている。J次郎の会社のインド人もおいしいと言って薦めてくれた。
混んでいるものとおもい、日曜の昼1時、予約をして行ってみると、広い店内はがらがらだった。
J次郎はサモサ大好きで、前回バンガロールに滞在したときは、THE PARKというそれはおしゃれなホテルに滞在したが、このホテルのサモサはとてもおいしく、それこそ毎日必ずオーダーして食べていた。だが、Taj Deccanではメニューになく、思う存分サモサを食べる、というJ次郎のささやかな夢は叶えられないでいた。
ANGEETHIでは、サモサがあったので、早速オーダーした。
サモサはスモールサイズで、食べやすく、添えられている甘めのソースをつけて食べるが、おいしい。J次郎も大満足。
カレーは、チキンカレーを食べた。辛くないものを、と聞いてオーダーしたので、食べやすい辛さ。リッチでマイルドで別にオーダーしたナンとおいしく食べた。
そして鶏肉のケバブは、香ばしく、ぷりっとしてジューシーで、驚くほどおいしい。普段あまり鶏肉を好んで食べない私だが、これはまた食べたい。
←Murgh Makhni 195ルピー
↓Chandi Kebab 185ルピー
ANGEETHI
Reliance Classic ビルの7階
Road No.1, BanjaraHills Hyderabad Tel,040-66255550
滞在しているTaj Deccanは、居心地よく気に入っている。
ただ、ひとつ問題なのは、蚊が多い。見つけ次第やっつけたつもりでも、いつのまにか部屋にいる。寝てる間に耳元のぷーーーんという音で目が覚めたことも何度かある。窓は開かないようになっているので、どうやら廊下側から入ってくるらしい。部屋をクリーニングしているときは開けっ放しだし、出入りのちょっとした瞬間に入ってくるようだ。
ただでさえアトピーもちの上、夜になると蕁麻疹がぷくっと現れる蕁麻疹体質なので、これ以上痒みになやまされるのにはうんざりだったし、マラリアも怖い。
そこで、Q-MARTにて、蚊対策グッズを買った。
スプレーが78ルピーで、コンセント差込タイプのマット式のものが36ルピー、換えのマットが50ルピーだった。
トロントで暮らしているかぎり必要はないが、メキシコなどのビーチへ滞在するときにもっていけるので持って帰るつもりだ。
インド料理はおいしいのだが、辛い。ハラペーニョで鍛えられたj次郎は平気なようだが、私には舌が痛くなるほど辛く、とても耐えられない。なので、なるべく辛くないものを聞いてオーダーするようにしているが、そうすると、どこでも頼むものが決まってきてしまうのだった。
そこで、というわけでもないが、City Centerにあるマクドナルドへ行った。
インドのマクドナルドには牛肉メニューはないので、私はフィレオフィッシュを、J次郎はチキンマハラジャマックをオーダーした。
金曜の4時近く、レジは並んでいたので、待たされるかと思いきや、すぐ に順番がきて、オーダーした後もすぐにでてきた。
に順番がきて、オーダーした後もすぐにでてきた。
フィレオフィッシュはカナダや日本で食べるのと味は変わらない。
チキンマハラジャマックは、チキンのパテでハンバーガーにしたもので、マックチキンを頼んだほうがよかったかも、という味だった。
ポテトには、右の写真のようなスパイスパウダーがついてくるので、紙袋に入れて振って、味をつけて食べる。これはおいしかった。
ポテトとコーラのコンボでそれぞれともに127ルピーだった。
11月発行のGOhyderabadというタウン誌に載っている住所に行ってみたが店はなかった。電話しても繋がらなかった。
Banjarahillsに引越していたのだった。
店は、扱っている布の色彩が華やかで美しく、Fabindiaより洗練されている雰囲気だった。品揃えも豊富で、眺めているだけでも飽きない。お土産用に、テーブルランナー(170ルピー)と、ティーポットカバー(140ルピー)、6枚セットのスモールサイズのテーブルナプキン(175ルピー)をおそろいの布柄で買った。長居するととりとめもなく買ってしまいそうだった。
Soma Shop (Hyderabad)
Plot No.5, Ground Floor, UBI Colony, Road no.3, BanjaraHills
テロによるムンバイでの悲惨な夜から一夜明け、マスコミから様々な情報が入ってくる。
現地の新聞やテレビからは生々しい写真や映像が映し出され、その惨劇の有様に震撼する。
専門家による分析などもされているようだが、このような状況にありがちな、いろいろな憶測も飛び交っていて、次はハイデラバードか、とか、過去に処刑された仲間の復讐のため、一人につき百人殺す計画があり、これからもテロは引き続き起こるだろう、などといわれている。
J次郎の会社は、大騒ぎだ。アメリカ本社の、普段ほとんど接触のない重役からも、我々は君が無事であることを心より喜んでいる、などとメールがきたそうだ。
そして、今回のJ次郎の滞在はもちろん、他の赴任者や出張者の引き上げを検討するという。
ちなみに私達がIT都市ハイデラバードに滞在しているとおり、その会社とは世界の企業のなかでも十何番目というアメリカに本社のあるIT企業である。インド国内でのその会社の就業人口は、アメリカ国内に次ぎ二番目にあたり、数万人という人々がその会社に従事している。いわゆる誰もが知っているアメリカの会社、なのだ。あえてテロリストたちの標的になってもおかしくはない。
そして他の企業と同様、インドへのアウトソーシング化は現在進行形である。
ただ、今、もはやアウトソーシングというのは、なにもインドしか選択肢がないわけではない。人件費が安く、英語が話せ、ITに明るい国というのは、他にも候補があるのだ。
そして今回、テロリストたちはインドは安全ではない、ということを世界にしらしめた。実は、今年に入っても、インド国内ではテロは頻繁に起こり、多数の尊い命が犠牲になっている。ただ犠牲になったのがインド人だったため、国外ではほとんど報道されてこなかったのだ。
こうして、もし、ITに限らず、国外企業のインド拠点進出に歯止めがかかることになれば、インドという国にとっても大打撃になる。まさにこれがテロリストの思惑のひとつではないか。
私自身は、といえば、怖いか、といわれれば、怖い。今回のテロについて全面的に解決したわけではないからだ。噂通り、ハイデラバードが標的になり、今滞在しているホテルで同じことが起こる可能性もあるが、だからといって、すぐに帰国することにして、当日空港が襲撃されるかもしれない。
ハイデラバードでは、ショッピングモールやホテルの入り口には、警備員の数が少し増えたが、通りを歩く人々や車の喧騒は変わらない。
ホテルでは食事をしにきた着飾った男女のグループがパーティーの会場の下見をしていた。